看護部
病棟だより
11.ジャガイモの味がする!!
最近、食欲が低下していたHさんの「次は何をするんだ?」の一言が5回目を迎える食レク開催のきっかけとなりました。他の患者さん達も待ちわびていたようで、やはりあんこ物のリクエストがありました。Hさんは今回の食レク開催を知らされると、日々の生活の中で表情に活気が戻り、食欲も増しました。レクレーションに対する期待がもたらした変化と推測することができ、これには私達スタッフも少し驚きました。
今回も患者さん参加型で、メニューは石狩鍋と定番のお汁粉、芋もちでした。やはり、あんこは根強い人気があります。当日、患者さんは芋や人参の皮むき、白玉団子を丸めることに真剣に取り組み、Hさんは「これは俺の作った団子かな?」と言いながら、いい笑顔でお汁粉を3杯もお代わりしていました。待ちわびていたこの日を迎え、自分で作ったお汁粉を食べることができた喜びと達成感はHさんにとって何にも代えがたいものだったのだと私達スタッフにはと感じられました。Nさんは「リハビリのA先生に食べてもらいたい」と感謝の気持ちを込めて調理を手伝い、A先生が「おいしい」と言いながら食べるのを、嬉しそうに見つめていました。元々は消極的なNさんですが、今では人のために調理したいと前向きな気持ちを持って参加できるようになっています。Oさんは左片麻痺ですが足で大根を押さえながら懸命に皮をむいていました。それを見つめていた同じく左片麻痺のSさんが「私も片っぽだから押さえてあげる」と、二人で一本の大根の皮をむいていました。人として人を思いやる心が自然に現れた心が洗われる場面でした(写真1)。Tさんは病気のために食に対する認識が薄く、経口摂取がうまくできない状態ですが、西3F病棟でお世話を始めた時に「ジャガイモの塩ゆでが食べたい」という言葉が聞かれました。Tさんの気持ちに持続はなかったものの、スタッフがその言葉にこだわり、茹でたジャガイモを手に持ってもらうと、「おいしい。ジャガイモの味がする」(写真2)と、数口ではありますが食べることができ、手についたカボチャを舐めると「カボチャの味がする」、大根の漬物を提供すると「昔、お母さんが漬けていた!」と、食べ物の味をしっかり認識し過去を追想することができました。懐かしい物を口にすることで、「食べたい」という気持ちが芽生えた感動の瞬間でした。私たちスタッフもこの食レクによって患者さんが食べるきっかけを掴み、次の段階へ進むための関わりができると実感しました(この方は、現在はお粥を食べることができます)。午後からは出来上がった石狩鍋やお汁粉が振る舞われましたが、昼食後にも関わらずお代わりする方が大勢いらっしゃいました。もちろん、その日の夕食も完食です。翌日、スタッフが患者さんに「昨日はごちそうさまでした」と声をかけると、今までは「そんなことないよ」、「こっちこそありがとう」という言葉が返ってきているだけでしたが、今回はどの人も「どういたしまして」と誇らしげにそして笑顔で答えてくれました。
写真1
写真2
今回もまた患者さんにとって(1)家庭の味を楽しむ、(2)調理に参加することで「自分にもできた」という実感が持てる、(3)「腹、いっぱい食べた」と満足できる、という私達スタッフの期待する結果が得られたレクレーションであったと思います。患者さんの満足する表情からスタッフも充足感と明日への活力をいただいた一日でした。
患者の一言にこだわり、人の基本的欲求である「食」に関わったことが、人間が本来持っている力(自然治癒力)を少しでも引き出すことにつながったのでは、と感じられました。やはり、看護・介護は『ミッション!(その人に関心をよせる、どうありたいと願っているのかを知る)』、『パッション!(どうにかして願いを叶えられないか、と想いをよせる)』、『アクション!(その願いを実現するために行動する)』だと改めて認識しました。
平成25年12月4日(水) 洞爺温泉病院 看護部 西3病棟(介護療養病棟)
- 前のページに戻る -