看護部

病棟だより バックナンバー

6.嬉しい出来事 〜白いまんまが食べたい!〜

脳梗塞による球麻痺の為、胃瘻からの栄養に頼らざるを得なかったHさん。もともとは「食べられるようになったら家に帰ろう」と家族に励まされ、そこに希望をもって療養生活を送っていました。ところが、外泊中に再梗塞を起こし、球麻痺のために食べると誤嚥性肺炎を起こして食べることが出来なくなってしまいました。ほかの人がご飯を食べる場面を見るにつけ、「食べられないぐらいなら死んだ方がいい!」と絶望の日々が始まりました。そばにいる私たちはHさんの辛い気持ちを聴きながら、辛さが少しでも軽減するように食べることができない人が多い部屋へ転室と病室を調整したり、肺炎が起きることがわずかでも少なくなるようにと口腔ケア・除痰、体位変換を丁寧に行って関わっていました。点滴による治療が行われる中で、徐々にHさんは衰弱していき、傾眠がちな毎日を送る状況になっていきました。病状が落ち着き、栄養補給の手段として胃瘻が増設されることになりました。食べさせたい家族にとってはとても辛い選択でした。胃瘻による栄養が始まり、それに伴って体力も少しずつ回復。元気が出てきて顔つきもしっかりしてきました。そこで、食べられなくなってから4か月目に話された言葉が「白いまんまが食べたい!」です。本人と家族の強い希望があり、私たちスタッフも何とか食べさせてあげたいと強く思い、経口サポートチームによるカンファレンスが開かれました。結果はGOサイン。さっそく、食べられることをHさんに伝えに行くと、第一声が「バンザイ!」。顔をくしゃくしゃにして喜んでいました。伝えた私たちにもこみあげてくるものがありました。

そして当日。大事を取ってまずはお粥を提供。それを見た途端Hさんは「なんだ、お粥かと」口に運んでいました。あんなに待ち望んでいたはずなのに、このままではいけない!何とかHさんの満足した笑顔が見たい!と思い、その日の昼食の炊き込みご飯を急いで運びました。Hさんは「うまい、うまい」とパクパク食べていました。食べ終わった後は満面の笑顔とピースサイン。満足のいくご飯を食べさせてあげることが出来て、本当に良かったと思えた場面でした。

「食べる」とは人が持つ自然な欲求であり、食事は元気であれば生きていくのに欠かすことのできない、当たり前に行える行為です。さらに、Hさんにとっては家に帰れるようになるために必要な、とても意味のある行為でした。
近年、胃瘻増設が反対される傾向にありますが、胃瘻を増設したことで患者自身が体力を取り戻し、数口でも口から食べることが出来るようになった嬉しい場面でした。私達看護師は介護士と協力し合いながら日々、Hさんや家族の気持ちを聴き、肺炎予防のためのケアをきっちり行なっていました。誤嚥性肺炎のリスクを優先させるより、その人の持てる力を諦めずに支えたことで、今では普通の食卓に並ぶ食事に近いものを食べることが出来ています。今日も「満足!」と満面の笑み。
やはり、看護はいつも顧問が訴えているミッション!パッション!アクション!!です。私たちはこの患者の笑顔を見られるなら何とかしてあげたい!と使命に駆られるし、情熱により行動した結果、得られた達成感が自分の気持ちの充足と、明日への活力へとつながりますね。どの場面でもその人に関心を寄せ、気持ちに寄り添い、少しでも支えでいられるような存在でありたいと願わずにいられません。

平成24年9月27日 洞爺温泉病院 看護部 西3病棟(介護療養病棟)


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